全国の医療機関の経営支援を行うエムスリードクターサポートで、人事のマネージャーを務める大楠友也様。求人倍率約7倍といわれ、人材獲得競争の激化が続く医療従事者の採用。その難しい領域に挑戦する理由とは何か、お話を伺いました。

命を扱う「究極のサービス業」の採用に携わりたかった

人事、採用に携わったきっかけは、前職のリクルート時代での挫折経験にありました。2008年に新卒でリクルートに入社後、営業や商品企画を経験。2013年に初めてマネジメントを任されたのですが、何もかもうまくいかずに1年間苦しみ続けたんです。知識やスキル、経験があっても、人を理解していなければ仕事は円滑に進まないと痛感し、人材活用や育成に興味を抱くようになりました。幸運にも、ちょうどそのタイミングで会社から「外で人事の勉強をしてきなさい」とファーストリテイリングに出向する機会をもらうことができました。新卒の大量採用から海外在住の外国人のヘッドハンティングまで、初めてのリクルーターとしてのキャリアは無我夢中でスタートしました。


2014年から1年間の出向を終えた後は、リクルートキャリアで人事と採用のマネージャーを兼務し、さらにはグループ会社の人事も同時に担当。コーポレート部門だけでなく営業で現場経験も重ねるなかで、より人材バリューの大きなところでチャレンジしたいと考え、2017年7月にエムスリードクターサポートに転職しました。

医療業界を選んだのは、命を扱う医療こそ「究極のサービス業」であり、そのなかでも人事こそ最も力を入れて取り組むべき領域だと考えたからです。リクルートでビジネス観点を鍛えられたこともあり、大きな社会課題に向き合いたいという気持ちもありました。

 

医師や薬剤師といった医療従事者の求人倍率は約7倍と非常に高く、人材獲得競争の最も激しい業界です。求職者側はより条件のいい勤務先を求めて、入職してもすぐに他の病院やクリニックに移ってしまい、採用コストだけがどんどん膨らんでいることも多い。その額は概算で年間数千億円になるといわれています。病院の売上の約7割は国の健康保険で賄われているケースが大半なので、膨大な採用コストにも税金が投じられているのです。多額の紹介手数料をかけて採用するけれど、人材の育成や定着にお金を使えず、辞めていくのを止められない……。そんな負のサイクルは断ち切るしかありません。この構造にも何とか一石を投じ、医療業界の人事に新しい風を吹き込みたいという思いも、今の仕事のモチベーションの一つになっています。
 

全国の現場を駆け回る営業力とマーケティングの思考を踏まえた採用活動

医療・介護職を業とする人事部には7人のメンバーが在籍し、当社が経営支援している全国の病院で、医師や看護師、理学療法士、薬剤師などの医療従事者を年間500人弱採用しています。しかし、1年前に入社したときの人事担当は私のみ。人材紹介会社の対応、求人広告の原稿のリライト、そもそもの採用条件求人情報の見直しなど、採用におけるあらゆる業務を進めながら、人事部の仲間を増やしてきました。

入社してまず取り組んだのは、全国を飛び回り、現場から情報を得ることでした。過疎地のクリニックから都心の大学病院まで幅広く足を運び、業界理解や医療知識を少しずつ深めていきました。採用の実態、院内の人間関係、勤務している医師や看護師のタイプなど、候補者にとって必要となりうる情報はすべてキャッチしたいと考えたのです。

その行動を支えたのは、「命を扱う現場だからこそ、候補者に中途半端な情報は伝えられない」という思いです。使う機器は何か、業務内容はどこまで含まれるのか、患者はどんな疾病を抱えたどういうタイプの方が多いのかなど、具体的な情報を伝え、入職後のミスマッチを防ぐことは、そのまま患者の安全や安心につながります。採用後の定着率を上げることもまた、患者に安定した医療サービスを提供する環境づくりにつながります。人事に携わる者として、現場を見て、候補者がその病院やクリニックの雰囲気、既存の病院スタッフメンバーと合いそうか、判断材料を持ち合わせることが大切だと考えています。

 

また、定着率を上げる取り組みの一つとして、SPI(総合適性検査)を用いた採用基準作り、配属設計を導入するという新たな試みも始めました。医療業界の採用は売り手市場が続いていることもあり、面接した候補者の7~8割以上に内定を出しているのが一般的。スキルマッチングが主流で人物面の適性は体系化されていませんでした。

 

そこで、どういう人物が向いているのか、現場で活躍できるのかを言語化することで、採用後の定着率を上げようと、病院の理事長に提案。最初は大反対だった病院側にも、分析結果に納得していただき、スキルや経験以外にも人物面を考慮した採用ができるようになりました。医療職にSPIを導入して要件を策定する難易度は高かったのですが、こうした採用の現場を体系的に科学するマーケティングスキルも、今後リクルーターに求められる重要な要素だと考えています。

 

また、病院側と話を進める際、論理的に正しいことをビジネスライクに提案しても、納得していただけないことも多くあります。「人事の若造が何を言っているんだ」と拒絶されてしまっては話が進まないので、いかにかわいがってもらえるかという視点のコミュニケーションも大切です。論理と感情のバランスを取りながら、「分からないので教えてください」と言える関係をいかに築けるか、前職の営業経験が生かされていると感じます。

半年後の定着率をKGIにして、本質的なリクルーティングを進めていく

人事部のマネージャーとして取り組んでいるのは、採用数は中間指標(KPI)とし、半年後の定着率を最終目標(KGI)に置くことです。そのため、チームメンバーとのミーティングでは、人事に関する勉強会を定期的に設け、労務や給与計算などの知識も深めています。自分が携わった候補者が入職したあとどういう働き方をするのか。具体的にイメージして提案できなければ、「採って終わり」の無責任な採用になってしまいます。

採用は、その人が活躍してはじめて意味を持ちます。そう思うようになったのは、前職での人事時代の経験があります。私が前職で人事と採用のマネージャーを兼務したのは、採用された人が半年以内に辞める事態を何度も目の当たりにしたから。採用現場で何が起こっているのかを知りたいという危機感があったのです。実際に採用サイドに行くと、当時は目標が採用人数に置かれていたため、入社後の活躍まで見る余裕のない現状がありました。人事と採用の両方の視点を持つ大切さに気づかされ、それ以来、「KPIは採用数、KGIは半年後の定着率」という軸を大事にしています。

 

当社は、まだまだチャレンジの途中。メンバーには、とにかく現場に行ってリアルな情報をつかむように伝えています。最近はメンバーの一人が、採用に苦戦していた病院の理事長と信頼関係を築き、理事長の横に自分の席を用意してもらえました。採用後までを考える姿勢が病院側にも伝わった、うれしい事例でしたね。

 

今後リクルーターが増え業務が画一化し、またAIなどテクノロジーを活用した採用も進んでいくなかで、「“作業”に終始するリクルーター」と「本質的なバリューを発揮できるリクルーター」の二極化が進むと考えています。だからこそ、採用数という目先の目標に縛られず、候補者の人生を本気で考えられるリクルーターが求められます。また、いかにプラスアルファの介在価値を発揮できるかが、差別化につながると思っています。例えば私は、大学時代にファイナンシャルプランナーの勉強をしてきたこともあり、医師に対し、税金対策や保険に関する相談に乗ることができます。生活全般の話ができることで、信頼関係を築けたケースも多くあり、得意な領域を複数持っておく重要性を感じています。

常に最新の情報をキャッチする姿勢も非常に重要です。医療業界の動向をはじめ、ベンチャー企業の新たな採用手法をリサーチするなど、どこが競合となりうるのか、アンテナを張っておく必要があります。

 

私が目指すゴールは、リクルーティング業務を通じて、医療業界における過剰な採用費を適正化することにあります。その分を人材育成に活用できれば、日本の医療費削減の一助になることは間違いありません。当社にいるからには、この高くチャレンジングな目標に向かっていきたいと考えています。

大楠 友也 様

2008年に新卒で株式会社リクルートに入社。営業、商品企画、営業企画などを経て、2014年に人事として、株式会社ファーストリテイリングに1年間出向。その後、株式会社リクルートキャリアにて人事と採用のマネージャーを兼務。2017年7月より現職。

エムスリードクターサポート株式会社
人事部 シニアマネージャー
大楠 友也 様

主催:プロ・リクルーター養成講座事務局

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